グランプリ(GP)ファイナル第2日に行われた女子の試合は、女子シングルで史上最多となる5度目の優勝を目指す浅田真央が69.13点で3位で発進した。
冒頭のトリプルアクセルは見事に着氷させたが、2連続ジャンプの2つ目に回転不足の判定、最後のトリプルルッツにもミスが出た。
試合後の海外のファンからはアクセルジャンプや他の要素を評価する半面、「ルッツを跳ばないで」といったルッツを不安視する声が大きかったようだ。
元々苦手ともいわれ、試合初戦からこのルッツが鬼門になっているように見える浅田選手だが、「なぜこのジャンプをSPに取り入れたのか」という点から見てみたい。
浅田が3回転ルッツをSPで跳ぶのは08~09年シーズン以来となるが、エッジのアウトサイドで踏み切るルッツは、浅田が過去に踏み切り違反による減点が多かったジャンプという事は知られている。
復帰初戦を控えた今年10月に浅田は3ルッツについて「いい感じに(踏み切り時のエッジが)アウトになってきた」と話し、苦手とされてきたジャンプをプログラムに組み込むことを明かした。
その後に続く連続ジャンプについても、当初フリップとトーループの連続3回転に挑戦する意欲を示していたが、フリップの後ろに選んだのはトーループより基礎点が高いループだった。
理由はフリップ―ループの方が得意だからだという。
そして最後に跳ぶ3ルッツは基礎点が1.1倍の演技後半に予定し、ジャンプ基礎点の合計はなんと25.5点に達する世界最高のプログラム構成になっている。
この高難度プログラムへの挑戦は浅田の希望だと言われ、コーチの佐藤氏も「本人の強い意志」と明かしている。
この選択の背景には昨季、世界選手権を制したトゥクタミシェワ(ロシア)がトリプルアクセルを跳ぶなど、女子フィギュアが新時代に突入したことが大きい。
「挑戦していくしかない」と同コーチが言えば、浅田も「(周りが)レベルアップしているし、負けない構成を持ってきている」と話した。
その高難度と言われる浅田のジャンプの構成はこうだ。
・3アクセル 8.50点
・3フリップ+3ループ(3フリップ5.3+3ループ 5.1)10.4点
・3ルッツ(6.00)後半に飛ぶので6.6点
合計 25.5点
※ちなみに基礎点が低い順に並べると以下の通り。
トーループ→サルコウ→ループ→フリップ→ルッツ→アクセルルッツはアクセルの次に難しいジャンプなのだ。
現在の女子SPはダブルアクセルかトリプルアクセルが必須要素で、トリプルアクセルを跳べる選手が絶対的に有利になることは確かだが、全ての選手が飛べるジャンプではない。
その為、連続ジャンプを難度の高い組み合わせにしたり、出来るだけ難度の高いジャンプを組み込んだ構成にしてくる選手もかつてに比べて断然増えてきた。
例えば、休養前の浅田はトリプルアクセル、3回転フリップ、ループの3―2回転でジャンプ基礎点の合計は合計21.39点だったが、昨季のトゥクタミシェワはトリプルアクセル、3回転ルッツ、トーループの連続3回転で23.96点の構成で挑んでいる。
つまり復帰するからには勝負できる勝ちにこだわったプログラム構成にしてきたという事だろう。
浅田が休養後、いきなりのファイナルに進むことも過去の実績から言えば当たり前のような気もするが、例えば男子で同じく一年間の休養を経て復帰したパトリック・チャンも今季、本調子とは言えず、ジャンプの精彩も欠いた状態に見えた。
一年間休養し、得たことがある一方で、試合感や技術などを取り戻し、なおかつ1年間の間に成長を続けたライバルに勝つためにはさらなるレベルアップが必要になってくるのだろう。
しかし、細かく見て行けば今回のショートでも演技構成点は全体の1位だったわけで、技術点を補えるだけの点数は取れるのではと個人的には思ってしまう。
あえて苦手なジャンプを跳ばずとも、浅田程の選手ならもっと得意な別のジャンプに変えて得点を伸ばすという選択肢もあるのではないかと思ってしまうのだ。
一方で、羽生選手にも感じることではあるが、自分の目標に向かって常に挑戦する気持ちを大切に考えているのかもしれないとも感じる。
バンクーバ五輪後にスケーティングを一から見直し、3アクセルが跳べなくなった彼女が、再び今、綺麗な3アクセルを見せてくれることを思うと、やはり浅田選手は挑戦を続けるのかもしれないと感じるのだ。
フリーでは持てる力を存分に発揮して自身が満足できる演技を期待したい。
女子のショートプログラムの結果は以下の通り。
1位 エフゲニア・メドベジェワ 74.58点
2位 エレーナ・ラジオノア 69.43点
3位 浅田真央 69.13点
4位 宮原知子 68.76点
5位 グレイシー・ゴールド 66.52点
6位 アシュリー・ワグナー 60.04点
初出場の宮原知子(大阪・関大高)は68.76点で浅田に次ぐ4位発進。宮原らしいミスのない安定感のある演技を見せた。
後半にすべてのジャンプを組み込み、高得点を狙う構成で挑んだロシアのエフゲニア・メドベジェワが74.58点で首位に立った。
2位は69.43点のエレーナ・ラジオノワとロシア勢が続いている。
Credit : figure skating 2014