労働安全衛生法が改正され、従業員の心理的な負担を調べる「ストレスチェック」が、12月から義務化されるという。
このストレスチェック、従業員50人以上の事業所は12月から1年に1回以上、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査が義務づけられるというもの。
50人未満の事業所は当分の間、努力義務で、事業者は検査の結果を分析し、労働者の心理的負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならないという。
また、結果は労働者の同意がなければ、勤務先には通知されないといい、厚労省は4月下旬に具体的な指針を公表する予定だという。
2013年には精神障害の労災請求件数が1409件と過去最高になるなど、労働者の状況は依然厳しい中、診断だけでなく、職場環境改善のための取り組みも始まっているという。
実際にどのような形の取り組みがあるのだろうか。
有線放送サービス「USEN」が行っているのは、企業向けサービス「サウンドデザイン」というもの。
無音の職場にヒーリング系の音楽を流し、心を落ち着かせるとともに、集中力も高めることで、仕事の効率を上げるという。
実際、このサービスを取り入れている渋谷区の会社では、会社の始業と同時に曲がかかり、最後に退社する社員が消すのだというが、昼休みはアップテンポのジャズを流すなど、時間帯に応じて曲を変えているといい、他の社員の電話や打ち合わせの声も、音楽によって打ち消され、気にならなくなるなど、職場が無音の状態よりも効率が良いという。
このオフィス向けサービスを提供しているUSENによると、精神科医の監修で、集中力向上やメンタルケアの為のチャンネルなどを設定しており、ストレスチェックなどをネットで行う支援サービス「こころの保険室」も2月に開始、既に問い合わせは5000件を超えるなど感心は高いようだ。
利用料も月額5,000円で利用できるため、同社の社員は費用対効果も良いと話す。
又、もっと掘り下げた、ストレス診断と同時に、原因分析と事前予防をするプログラム、「日経リサーチPRAS(ピーラス)」という、宇宙飛行士にも利用されたストレス解消プログラムというものもある。
これは宇宙飛行士の健康管理の経験がある筑波大の松崎一葉・産業精神医学、宇宙医学グループの教授と開発したもので、通常のストレスチェック指標の他、個人のストレス対処能力を「困難を乗り越える力」(SOC)、「仕事へのモチベーション」(SE)から計測するという。
さらに、従業員個人だけでなく、全体のパターンを分析することにより、職場の課題を発見することも可能だといい、例えば、上司が部下に仕事の意味や見通しを伝えることで、低かったSOCを高めることができるなど、具体的な環境改善策を見つけられるという。
日経リサーチの中嶋英幸・新事業統括部長は「ストレスの高い人にカウンセリングを勧めることも可能だが、職場ごとに要因を調べて、改善を図ることにも力を置いている」と話している。
(毎日新聞より)
企業側は、義務としてやるだけではなく、厚生労働省が出す指針をもとに、毎年、どのようにすれば効果的かを考えるべきだと指摘している。
また、川上教授は漫画を使ったeラーニングを開発し、職場のうつ病発症率を5分の1に減らすことに成功したという。
企業がこうした努力をすることで、ストレスを抱えにくい職場環境を作っていく事ができるか、今後、注目が集まりそうだ。